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広島女学院中学高等学校

更新情報

2021.09.03

「第11回広島本大賞」に卒業生の庭田さんの本が選ばれました

本校卒業生の東京大学2年庭田杏珠さんと同大学大学院渡邉英徳先生の共著『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社)が「第11回広島本大賞」に選ばれました。

8月9日付けの中国新聞デジタルの記事をご紹介します。

https://www.hiroshimapeacemedia.jp/blog/?p=108319

 

庭田さんは高校在学中から、「記憶の解凍」プロジェクトを渡邉先生と進めてきました。
原爆投下前の広島の白黒写真をAI(人工知能)技術でカラー化し、資料や対話をもとに「記憶の色」をよみがえらせ、戦争体験者の「想い・記憶」を未来へ継承する取り組みです。

庭田さんは高校1年の夏、広島平和記念公園で偶然、濵井德三さんと出会いました。濵井さんの生家は、原爆投下前4,400人が暮らした繁華街・中島地区(現在の平和公園)で「濵井理髪館」を営んでいました。疎開先に持参した大切なアルバムには、戦前のご家族とのしあわせな日常を写した貴重な白黒写真約250枚が収められていました。
濵井さんとの出会いの1週間後、講演で女学院に来校していた渡邉先生のワークショップに参加し、白黒写真の自動色付け技術を学びました。「原爆で亡くなったご家族をいつも近くに感じてほしい」という想いから、カラー化を始めました。アルバムにしてプレゼントすると、「家族がまだ生きているようだ」ととても喜ばれました。カラー化写真をもとに対話すると、白黒写真では思い出さなかった、新たな記憶がよみがえりました。その後、渡邉先生と共同で「記憶の解凍」プロジェクトを開始。中島地区の元住民との繋がりも少しずつ拡がっていきました。

高校1年の時、「Critical Issues Forum(CIF)」に参加。「記憶の解凍」の取り組みについて、核保有国のアメリカ・ロシアの高校生にプレゼンを行い、今年はゲストスピーカーとして、講演を行いました
その後も在学中に、ニューヨーク国連本部、パリのユネスコ本部、CGの査読付き国際会議「SIGGRAPH Asia 2019」(オーストラリア)などでプレゼンを行いました。また、国際平和映像祭(UFPFF)学生部門賞(2018年)、「国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール」外務大臣賞(2019年)などを受賞。広島テレビ放送・渡邉英徳研究室主催「広島テレビ新社屋完成記念展示会」(2018年)の開催、「記憶の解凍」ARアプリの開発(2019年)など、アートやテクノロジーを活かした戦争体験者の「想い・記憶」の継承に取り組みました。

2019年11月1日付け東京大学大学院情報学環・学際情報学府ウェブサイトをご紹介します。在学中の詳しい業績については、こちらをご覧ください。

https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/research/191101rebootmemories

 

大学進学後も、国内外の学会や大学等での講演、カラー化写真集の出版(「広島本大賞」を受賞)、平和公園のレストハウスでの常設展示、全国各地の展覧会、メディアなどで、AIと人のコラボレーションによるカラー化写真を通して、戦争や平和について関心のない多方面の人が「自分ごと」として想像する「平和教育の教育空間」を探究し続けています。

「AI」というと最先端で華やかな印象を受けます。しかし、高校時代は理解されないことが多い中でも、憎しみや悲しみを乗り越えて「もう誰にも同じ思いをさせてはならない」とこれからの平和を願う、戦争体験者の崇高な想いを受け継ぎ伝えていきたい、という強い想いを諦めず、地道な取り組みを続けてきました。

当初からその想いを理解してくださった渡邉先生と取り組みを進め、大学進学後も実践と研究を続ける中、学術的にも高い評価を得ています。様々な取り組みの功績により、昨年度は大学1年生にして令和2年度「東京大学総長賞」を受賞しました。

今年8月には、広島出身のシンガーソングライターHIPPY氏とピアニストはらかなこ氏と楽曲「Color of Memory〜記憶の色〜」、達富航平氏とMVを制作。作詞やコーラスにも初挑戦し、コロナ禍においても歩みを止めることなく、2日連続オンライン・イベント(8月1日8月2日)を開催するなど、カラー化写真と音楽のコラボレーションによる、「観る・聴く」人の「感性」に響くあたらしい伝え方にも取り組んでいます。

「広島本大賞」受賞を機に、庭田さんの高校時代からの取り組みと業績をご紹介し、渡邉先生へ感謝の気持ちをお伝えすると共に、今後のますますのご活躍をお祈りします。